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2012年12月号vol.425

今月のタイムス
MONTHLY SPECIAL

関塾の先生に聞く!受験直前!「10点アップ」法
親と子の“こころ”〜家族カウンセリングの視点から〜
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皆さんは、悩み事がある時、誰に相談しますか? 家族に思ったことを言えていますか?
今回は「家族カウンセリング」という活動の紹介を通して、家族が本来持っている力について考えてみたいと思います。少し見方を変えるだけで、ずっと抱えていた悩み事が、ふいに解決に向かうこともあります。それは深刻な悩みに限らず、ふだんちょっと心に引っかかっているような、小さなことでも同じです。家や学校、塾で楽しく過ごすために、家族のことを考えてみませんか?

家族カウンセリングとは?

家族カウンセリングという言葉、皆さんには、あまりなじみがないと思います。家族カウンセリングとは、1960年頃にアメリカで始まったカウンセリング方法です。日本では、1984年に日本家族心理学会が創立され、家族心理学領域研究の推進に貢献しています。また、翌1985年には家族カウンセリングの普及・啓発を目的に家族カウンセリング協会を設立。以来、研修会の開催や家族カウンセリングを実践できる家族相談士の養成をしています。
家族相談士は、悩みを抱える家族から話を聞き、家族関係の調整や、健康な家族を作るための助言を行います。個人の悩みは、多かれ少なかれ家族環境が影響しています。家族の中のサイクルを見直すことによって、バランスをただす手助けをするのが、家族相談士の役目なのです。
今回は、東京にある日本家族カウンセリング協会の遠山千恵子さん(家族心理士/臨床心理士)、飯島晶子さん(家族心理士)にお話を伺いました。

家族カウンセリングの考え方

日本家族カウンセリング協会の発足と家族相談士

日本家族カウンセリング協会が発足した頃、マスコミなどが不登校や引きこもり、家庭内暴力といった言葉を頻繁に取り上げ、それらがなにかと話題になり始めていました。核家族化が進み、地域との関わり方も変化したことが原因でしょうか。家族が抱える問題が多様化、複雑化している中、家族カウンセリングという言葉は、まだあまり知られていなかったようです。遠山さん「個人カウンセリングに比べると、家族相談士や家族カウンセリングに対する理解は進んでいないのが現状です。家族相談士の資格は、家族カウンセリング協会が開講している養成講座を修了し(*)、家族心理士・家族相談士資格認定機構実施の家族相談士資格認定審査(筆記審査と面接審査)を受験して取得することができます。
家族相談士は、家族に関わる様々な機関−−学校や病院、介護施設などで活躍しています。学校の教員や保育士、看護士、介護士の方が取得されるケースは珍しくないですね。生徒の相談を受けることが多い塾の先生が、講座を受講されることもあります。」
様々な場所で家族対応の必要性が高まってきているようです。
飯島さん「現在、家族相談士の資格を持っている人は、全国でおよそ1100人です。2001年に日本家族カウンセリング協会が開設したFSR(ファミリー・サポート・ルーム)のように、家族カウンセリングを行う場が全国に設けられています。」
*家族相談士養成講座を受講するためには、日本家族心理学会または日本家族カウンセリング協会に1年以上在籍すること、必要な資格を得ていることなど、いくつか条件があります。

どのような問題にも、根底に「家族」がある

飯島さん 「家族カウンセリングは、複数人の家族に対して行う場合と、個人に対して行う場合があります。ケースによって柔軟に対応できるよう心がけています。カウンセリングをしていると、どのような問題でも根底にはW家族Wがあることを実感しますね。」

根底に家族があるというのは、問題の原因が家族にあるということでしょうか?
飯島さん 「そうではありません。学校でいじめがあって、それが原因で不登校になったケースなど、原因がはっきりしているものも、もちろんあります。ですが、家族カウンセリングで相談を受ける問題の場合は、複数の原因がからみ合って複雑化していることがほとんどです。そうなると、その小さな一つひとつの原因は、もはや問題解決に直接つながる原因ではなくなっています。つまり、誰か一人に、あるいは特定の何かに原因を求めることをしません。家族カウンセリングでは、まずそのことに気づいてもらえたらと思っています」

子どもの暴力や不登校、親の育児放棄などの事件があると、テレビなどでは親の責任について報じられることが多い気がします。まちがっていないようにも思えます。
遠山さん 「ニュースで大きな事件が報じられると、まず不安を抱えるのは母親ですね。夫婦が共働きであっても、家のことは母親に任せているケースも多いようで、私も同じような過ちを犯してしまったらどうしようと不安になって相談に来られる方もいます」
飯島さん 「不登校や引きこもりなどの問題が発生すると、原因は家を預かる自分にあるのではないかと悩むようです」

問題を解決しようとする時、私たちはすぐに原因を探し出そうとします。学校でい
じめられたから、家族に成績のことで怒られたからなど、原因を見つけてそれを取りのぞくことで、すっきりできると思いがちです。
飯島さん 「報道などをきっかけに、家族の在り方について考える機会を持つのは良いことです。しかし過多な責任を感じる必要はありません。それに、必死になって原因を探すことが、必ずしも問題解決の近道になるとは言えないのです。家族カウンセリングでは、原因追求ではなく、少し違った視点からケアを行います」

問題の原因を追求せず、視点を変えて行う家族カウンセリング。具体的にはどういった考えで進められるのでしょうか。
遠山さん 「個人に発達段階があるように、家族にも発達段階(家族ライフサイクル)があります。新婚夫婦の時期、幼い子どもを育てる時期、青年期の子どものいる時期などといった、各段階での節目を何度も迎えながら、家族全員で乗り越えていきます。このライフサイクルの課題がどの程度適切にクリアできているかを見極 めるのも家族カウンセリングの基本の一つです。」

現状と家族ライフサイクルを見つめ直す

停滞している状況を見直す

実際、カウンセリングはどのように行われるのか、不登校と引きこもりを例に伺いました。引きこもりの問題は、小中高校生に限らず、大学生、社会人の子どもを持つ家庭でも起こっています。

飯島さん 「家族の問題は、10家族あれば10通りです。同じ不登校や引きこもりでも、事情は家庭によってまったく異なります」

引きこもりの相談でFSRに来所するのは、当事者の両親である場合がほとんどだそうです。引きこもっている本人と会わずにカウンセリングをどう進めるのでしょうか。
飯島さん 「当然、親は学校や職場に出られない子どもをなんとかしたいと思って来られます。FSRに来られる方は、様々な努力をされて、それでも解決できないというケースが多いですね。そこで、まずは、これまでどのような努力をされてきたのか、情報の共有をします。その上で、違う視点から今の状況を見直してみませんかと提案します」

先ほどの話によれば、家族カウンセリングでは、原因を特定しないといいます。違う視点というのは、具体的にどういったものなのでしょうか。
遠山さん 「各家庭には、それぞれのルールのようなもの、無意識のうちに繰り返している暗黙の習慣があると思います。ですが、それが家族ライフサイクルの節目を迎えても変わらずに固定してしまい、うまく循環しなくなることがあります。例えば、子どもが幼稚園から小学校へ進学したのに、親はこれまでと同じように対応しているとか。子どものほうも、親に甘えっぱなしになっているとか。習慣になってしまっていることは、たしかに変えにくいですよね。」
飯島さん 「話を聞いて、停滞している状況があれば、家族ライフサイクルを照らし合わせ、そこで無理をしていないか、何か変えられることはないか一緒に探っていきます」

ここで気になってくるのが、なぜ家族ライフサイクルが、不登校や引きこもりと関わってくるのかということです。家の外で起こったことが影響しているような気がするのですが。
飯島さん 「必ずしもそうだとは言えません。例えば、子どもが急に学校に行かなくなったり、前の日の夜は行くと言っていたのに翌朝になると腹痛を訴えて学校を休んだりして、その原因がわからなかったのなら。それは、ひょっとすると家族関係の中に何か不具合が生じていて、その不具合を敏感に感じ取った結果、症状として不登校や引きこもりが現れているかもしれないのです。もちろん、すべてのケースに当てはめてしまうのはよくないことですが、可能性の一つとして考えられます。」

そう考えると、「不登校や引きこもりをどうにかする」という考え方では、解決できないということになります。
飯島さん 「これも例えばですが、小学生くらいの子どもであれば、親に半ば強引に連れられて来所される場合もあります。そこで家族ライフサイクルについて話を進めていくうちに、原因が家族間の雰囲気が少しよくなかったのではという、可能性の一つに行き当たって、親がそれを自覚したとします。すると、子どもは自分の役目を終えたと感じて、翌日から学校へ通い始めるのです。」

どうして、家の中がぎくしゃくしていると、学校に行かなくなるのでしょう。
飯島さん 「問題を起こせば、家族の注目がすべて自分に集まると考えるのですね。そうすると、他の問題が一時的に止まるということがあります。子どもなりに解決努力をした結果、不登校や引きこもりになったということも、有り得るわけです。この場合ですと、親の立場からだけでは、なかなか気づくことができません。」

小学生だけではなく、中学生や高校生、大学生などでも似たようなケースは見られるそうです。こういった場合でも、視野を広げることが、解決のきっかけになっています。
遠山さん 「これが悪いから、こうしなくては、と考えを煮つめるばかりでは何も変わりません。そんな時に、第3者の立場から、客観的に変化のきっかけを模索してみる。これが家族カウンセリングで行っていることです」
飯島さん 「大抵は、話しているうちに、相談者自ら変化のきっかけに気づかれます。そうすると“そういえば、こんなことがありました”や“あの時、子どもはこんなことを言っていました”など、見方を変えるだけで気づきはどんどん広がっていき、夫婦の関係、子どもとの関係を見直すきっかけができます。問題が問題なのではないことを知り、効果を発揮していない努力について見直していくことが大切なのです。」

気づくことができると、相談者の様子は明らかに変わるそうです。肩の力が抜けて、柔らかな表情になるそうですよ。そして、次に話を聞く時には、家の雰囲気が明るくなっている。こうして一歩前へ進むことができるのですね。

今のままの進路でいいのか

家族カウンセリングでは、たとえ家族であっても、その場に同席していない人にカウンセリングの内容を伝えることはありません。こうしたことも、気軽に話せる環境を作っている一つの要因だと思います。
こうしたこともあり、問題を抱える当事者、皆さんと同じ小中高校生が、一人で相談に訪れることもあるそうです。
飯島さん 「勉強について悩みを抱える学生さんも多いですね。特に受験生、浪人生から、行きたい学校がわからない、本当に今のままの進路でいいのか悩んでいるという相談を受けることがあります」

親は、子どものためになると思って受験校について助言をします。子どもの自立を助けているつもりなのです。それがかえって、子どもにとってプレッシャーになってしまうこともあるようです。
飯島さん 「実際、10代後半の時期に、自分だけで将来をはっきりと決めてしまえるかどうかといえば、難しいことだと思います。おそらく、ほとんどの子どもが、学校や塾の先生、親の力を借りながら模索していくことでしょう。ですが、最終的に決めるのは、自分自身です。そのために、家族カウンセリングでは、まず今現在どういったことで悩んでいるのか、本人に話していただくことから始めます。進路のこと、親や兄弟との関係など具体的な悩みが出てくれば、まずはそこから解決していけるように、話を進めます。」
家族との関係は、一見、勉強には関係ない悩みかもしれません。しかし、それが解消されることで、しっかりとした目標設定ができ、勉強に力を注げるようになるといいます。

家庭と地域の変化

日本家族カウンセリング協会は、2010年に創立25周年を迎えました。家族を取り巻く環境を、どのように見つめてきたのでしょうか。
遠山さん 「新しい分野ということもあり、協会の設立当初は研究の毎日でした。」
飯島さん 「家族カウンセリングの概念はアメリカから輸入したものだったので、日本の家族環境とはうまく合致しない面もありましたから。日本の社会環境も、大きな変化の時期でした。ようやく落ち着いてきたかな、といった印象です。」

家族カウンセリングにおいては、どういった点が変わったのでしょうか。
飯島さん 「以前は、やはり父親の抵抗が強かったように思います。家庭の問題は、家庭で解決するべきで、第3者に話すのは恥ずかしいことだと思われる方が多かったですね。今でも、そういった考えをお持ちの方もいらっしゃいますが、以前に比べると父親の来談が増加している印象です。」
遠山さん 「ご近所付き合いがあり、地域がうまく機能しているならば、同世代の子どもを持つ親同士が交流して、悩みを共有できる部分もあるかもしれません。ですが、現在、特に都会で暮らす家族にとっては、それはなかなか難しいことです。ですから、FSRのような場所をもっと気軽に利用してもらえたらとは思います。最近では、積極的にカウンセリングに参加する父親も増えてきました。」
飯島さん 「日本家族カウンセリング協会では、家族相談士がファシリテーターとして子育て中の保護者が集まって話し合う機会を設けています。同じ悩みを抱えている親同士で話し合い、悩みを分かち合うことで、失われた地域の力を少しでも回復できればいいと思います。いずれは、保育園や小学校などに出向いて、同じような活動ができるように目指したいですね。」

家族が本来持っている「回復する力」

家族の問題が起こる前に、予兆のようなもの、家族が発するサインなどを見つけることはできないのでしょうか。
遠山さん 「私個人の感覚ですが、お互いのサインをきちんと読み取れる余裕が、最近の家庭にはあまりないのではと思います。
皆が忙しく、なかなか気づきにくいようです。それと、親は子どもを心配するあまり、“なぜできないのか”と詰め寄ってしまいがちです。できないことばかりに目がいってしまい、できることを褒めてあげられない。親に余裕がないからだと思います。今後子どもについて気になることがあれば、まず大人がそのことについて話し合う機会が持てるといいですね。」
飯島さん 「家族ライフサイクルの節目ごとに、問題は発生します。家族には、本来、そういった問題を解決して乗り越えていく力が備わっているはずです。カウンセリングでは、家族が本来持っている機能を回復するための手助けをしているのです。」
まずは話をする。相談できる第3者がいれば、思い切って打ち明けてみる。それでも解決しなければ、家族カウンセリングのような機会を利用してみる。様々な道を模索して、広い視野を持ってみることが、大切なのかもしれませんね。



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