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2008年4月号vol.369

今月のタイムス
MONTHLY SPECIAL

1. 一足早いスタートダッシュで差をつけよう!
新学年の学習ポイントはここだ!
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私の勉学時代
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関塾 タイムス

私の勉学時代

静岡大学学長 興 直孝先生に聞く

活躍できる場は必ずある。
自分の可能性を信じ、 悔いのないチャレンジを!
 静岡市駿河区、浜松市中区の二つのキャンパスを有する静岡大学。静岡キャンパスは遠くに富士山を望める日本平の丘陵地に位置し、人文学部、教育学部、農学部、理学部があります。浜松キャンパスは、浜松市が日本有数の産業集積地ということもあり、情報学部、工学部からは優れた研究者、技術者を数多く送り出してきました。今後も地域社会との共生を重視しながら、国際感覚豊かな人材を育成するべく、改革がすすめられています。

■Profile
興 直孝 (おき・なおたか)

1944年島根県生まれ。
静岡大学工学部卒業、69年東北大学大学院理学研究科(化学専攻)修士課程修了。同年科学技術庁に入庁、長官官房長、原子力局長、内閣府政策統括官(科学技術政策担当)などを歴任。科学技術、原子力行政に長年携わる。
2001年科学技術振興事業団専務理事、国立大学法人広島大学理事・副学長などを経て、07年国立大学法人静岡大学学長に就任、現在に至る。

ラジオから聞こえる父の声

 生まれは島根県の松江市。昭和19年ですから終戦の前年です。父と母に、姉が2人と妹が1人、あと母方の祖父が1人という家族構成でした。
 父は県立高校で国語と漢文を教えていました。戦時中に神道(しんとう)教育が盛んになると、国史の勉強をしていたことから若くして管理職となりました。当時多かった定時制や通信制の教師をしたり、ラジオ講座で話をしたりと、直接教えることは少なかったようです。私が在籍した松江高等学校でも教壇に立っていたのですが、全日制の生徒を教えたのは数年のことでした。父の背中は、教えている姿よりもラジオを通して感じていましたね。
 その後も大社中学校長や県立学校長等を歴任したりと、教育界に長くいました。そのため、私も子どもの頃から「教育」については身近に感じていました。


大人に交じって演劇活動

 遊びはドッジボールや野球など、何でも熱中する子どもでしたが、どれも際だって優れていたというほどではなくそこそこで…(笑)。ただ、小学5年から中学3年までの間、NHKの児童劇団に入団しました。当時はラジオ放送しかなかったのですが、毎週放送される放送劇に出演したり、そのための発声練習をしたりと、努力したことを覚えています。短い番組に参加したり、ときには大人と一緒に演劇をしたり。主役に選ばれたこともありましたね。別の地域の子どもたちと触れあったことや、大人に交じって活動をしていたことは、お互いを高め合う良いきっかけになったと思います。


「その身になって考えよ」

 小学4年か5年生の頃だったと思うのですが、頭に禿(はげ)があったり、青筋が走っていたりしていたので、そうした体の欠点を理由にいじめにあったんです。それで学校にいくのがイヤになったんですが、そのとき、父親が私をいじめた同級生の家を一軒一軒訪問し、説得してくれたんです。もちろん、どなりこむという感じではなく、あくまでも紳士的に。お互いがハッピーになるよう、学校長や先生方にも指導していたようです。それでいじめもなくなり、立ち直ることができたんです。ありがたかったですねえ。
 この経験から「自分がいくら頑張っても、相手が理解してくれないこともある」ということや、「相手の立場に立ってものごとを見たり考えたりすることの大切さ」を痛感することができました。そして、中学3年のときですが、校内の弁論大会でこの経験を元にした発表を行い、みごと優勝。市の大会でも優勝し、県の大会でも上位に入賞しました。タイトルは「その身になって考えよ」。つまり「ものごとのスタートポイントは自分ではなく相手」ということ。これらの経験や、あのときの父の真摯な姿は、本当に大きな支えになりましたね。

大きなメッセージと大きな課題

 中学時代の成績は1番か2番が多く、常に良かったですよ(笑)。勉強というよりも、劇団活動をしていた影響から、学校でも仲間を集めて演劇部をつくったり、放送部で校内放送を担当したりしましたね。他にも、陸上部のメンバーに選ばれたり、生徒会長にも選ばれたりと、何かと忙しい毎日でした。
 高校は地元の松江高等学校に入りました。劇団の先輩に働きかけ、文化祭で、フォークダンスをとり入れたり、生徒による学校運営への参加を図るなど学年を越えて、さまざまな活動をしていましたね。
 あのころはいわゆる安保闘争が盛んなときでもあり、授業が休講になったことがあったのですが、そのとき校長は「デモに参加するのも自習をするのも自由。今何を考えて生きていかなければならないか、それを考えてほしい」とおっしゃったんです。
 また、人類が初めて月面に着陸するなど、世界が大きく変わってゆくまっ最中でしたから、「この世界観が変わる中、自分たちの生き方を考えてほしい」という校長の講話もありました。高校2年だった私には、大きな課題をいただいたと思っています。「世界の平和のために努力してほしい。国を越えた地球全体でがんばっていく時代じゃないか」という言葉は、今でも印象に残っています。


社会とのつながりを大切にしたい

 そして大学受験で京都大学の理学部を受けたのですが、落ちてしまいましてね。まさか落ちるとは思ってなかったのですが(笑)。でも、それで入学したこの静岡大学に今もこうして身を置いている訳ですから、人生というのはわからないものですね。
 大学では工学部に在籍していました。そのとき一番お世話になったのが、後に6代目学長になられた櫻塲周吉(さくらばしゅうきち)先生です。自分で考えて卒業研究を行うようにと、自由に勉強させてくださり、ポケットマネーで学会に行かせてくださったこともありました。とにかくとてもかわいがっていただきました。
 その後、量子化学の世界的権威である小泉正夫先生の元で、光化学を勉強しようと思い、尊敬していた櫻塲先生の母校でもある東北大学の大学院理学研究科に入りました。小泉先生を含め、学会賞を取る人が出るような優れた研究室でしたから、そんな方たちと一緒に研究ができて、その後の人生のうえで、大きな力をいただきました。
 大学院修了後は、研究を続けることも考えましたが、社会とのつながりを大切にしたいと考え、科学技術庁へ入ることにしたのです。
 科学技術庁では、原子力の開発や、世界の核拡散の問題、さらには宇宙開発の平和利用のあり方や、エネルギーの安全確保と安定供給について、また、内閣府では、我が国の科学技術政策のかじ取りをすることとなるなど、多くの科学技術関係の問題に携わってきました。常に人・社会・国家との関係を考えながら働いてきましたので、今でも日本・世界の各地に友人がたくさんいますよ。


日本の若者を世界に向けて

 以前から、国際科学オリンピック日本委員会設立に関わってきました。これは、中学生・高校生を対象にした科学技術に関する国際的なコンテストで、数学・物理学・化学などの種目があります。日本はこれまで、参加はしていましたが、政府としてのバックアップはやっと行われ始めたところでした。「これではいけない」と、科学技術分野におけるオリンピックの場に、日本の若者をたくさん送り出す活動が始められたのです。私が関わった物理オリンピックでは、2年目に金メダルが2つ、銀メダルが2つ、銅メダルが1つという、世界でも5位というすばらしい結果を出すことができました。
 こうしたコンテストは、可能性をのばし、自分たちがどういう存在なのかを考えさせるとても良いチャンスだと思います。今や、「出る杭(くい)をのばす」時代です。
 現在は文部科学省も積極的に支援をしており、昨年には正式に日本委員会が発足。来年には生物の、再来年には化学の世界大会が日本に誘致されます。私としても全国の中高生にチャレンジを推奨する活動を展開していくつもりです。もちろん、静岡大学でも、こういった活動を応援していきたいと、学長として強く思っています。


ビジョンを共有して


 大学では、学長や執行部だけでものごとを決めるのではなく、教職員も学生もビジョンを共有していくことが必要になってきています。静岡大学は「自由啓発・未来創世」のビジョンのもと、静岡・浜松両キャンパスともに、社会との関わりを考えたうえで、地域と連携していかなくてはなりません。
 学生ともよく話をするのですが、そこで思うのは、みんな外から見えるイメージより努力をしているということ。志の高い人材を発掘し、彼らの存在と活動を、大学の活性化につなげていきたいと思っています。
 地域に根差した教育を大切にしたうえで、さらに、そこから世界につながるような教育研究の成果を生み出していきたいですね。一人ひとりの可能性をのばし、才能を開花させるのが、教育というものの基本ではないでしょうか。国際性豊かな人材を輩出してほしいですね。


自分に自信を持ちチャレンジを


 今は社会がさまざまなタイプの人材を求めている時代。それだけに、あらゆる分野にみなさんが活躍できる場があります。自分に自信を持ってください。自分の可能性に対してチャレンジをしてください。その先には、必ず夢が現実として待っています。
 学生時代の経験は、後の人生に大きな影響を与えることでしょう。だからこそ、今を「自己の発見と、自分は何をするべきかを考える時期」として大切にしてほしいと思います。そして、どんなときでも相手の立場になって考え、最善を尽くしてそれぞれの人生を歩んでいってください。




コラム
静岡大学

農学部渡辺修治教授の元で、研究員として花や果実の香り・色の研究を進めているスザンヌさん。「静岡大学は自然環境がすばらしく、研究体制も整っている。ドイツで行ってきた研究をさらに深めて、成果を出していきたい」と語ります。静岡大学では、留学生の受け入れ・海外の大学との協定をとおして、国際交流にも力を入れています。


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